午前6時。
携帯のアラームが「007のテーマ」をやかましく奏でる。
まぶたをこすりながら身を起こした僕を、鈍い頭痛と関節痛が襲った。
喉もひりひりと痛む。
「やっぱり…。」
実は昨日の夜から予兆はあった。
残業中の夜の8時ごろから急に寒気がしてきたので、
仕事を早めに切り上げて、昨夜は早めに床に就いたんだけど、
案の定風邪をひいてしまったようだ。
無理もない。
会社の僕の席の両隣とハス向かいの人が次々と風邪に倒れている。
加えて「医者の世話にならない主義」の僕の上司は、
ここ数日、僕の向かいの席でゴホゴホと咳をしながら働いていた。
根性は結構だが、まったくハタ迷惑な話だ…。
午前6時5分。
時間差で設定してある携帯のアラームが「スパイ大作戦のテーマ」を奏で始めた。
ベッドから起き出し、シャワーを浴びて様子を見てみたが、
かえって頭痛がひどくなった感じだ。これでは仕事にならない。
結局、今日は会社を休むことにした。
*
会社に電話を入れたあと、病院が開くまでひと寝入り。
夢を見るまもなく9時半に起き、かかりつけの耳鼻科に向かう。
喉の奥が真っ赤に腫れているとのこと。
苦い薬をべっとりと塗られ、吸引を施して、耳鼻科を後にする。
今日の東京は暖かかった。
自転車を漕いでいると、風の香りもどこか春めいていて心地いい。
思わずぶらりとサイクリングに繰り出しそうになったけど、
頭痛がひどくなってしまい、しぶしぶ家路に就く。
家に戻ってしばらく本なぞ読んでいたが、
じっとしているのも芸がないので、掃除洗濯などに着手。
実は先週末は家を空けていて、家のことが何もできていなかったので、
ちょうどよかった。
天気のいい日に思い切り掃除をするのは気持ちいい。
ついつい気分がノってしまって、
ガサゴソとホースを出して、ベランダの水洗いなんかしてしまった。
風に当たると身体に障るかとも思ったけど、
今日の陽気はまさに春そのもの。
頬を撫でる風のぬるさが逆に心地よいくらいだった。
三寒四温のこの時期に一喜一憂してもしょうがないけど、
春は確かにすぐそこまできている。
今日の午後の風に春の息吹を感じ、ベランダで一人ほくそえむ。
ふと、東京のこの家に越してきた日のことを思い出した。
あの日の匂いも、ちょうどこんな感じだった。
確かな「希望」の香りがした。
*
部屋もピカピカ。お風呂もピカピカ。ベランダもピカピカ。
溜まっていた洗濯も、アイロンがけも全部完了した。
体調を壊してしんどい思いをしてはいるが、
この小春日和の一日に家で過ごしたことはすごく貴重だったよ。
でも神様のくれた休息もわずか一日でオシマイ。
明日の朝は早めに会社に行って、仕事のとりもどさなきゃ。
そして、明日のこの時間はきっとまだ会社にいることだろう。
なんだかんだしている間に、気がついたら時計は22時を回っちゃったけど、
今日のここちよい達成感は、きっと風邪のよい薬になったはずだ。
さ、せっかくのよき一日を完璧に締めくくるためにも、
今日は早めに風呂に入って寝るとしましょうか。
ん、ちょっと待てよ。。。
何かとっても大事なことを忘れているような気が…。
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あーーーーっ、今日って
バレンタインデー じゃん!!
なのに誰からも何の連絡もなし。
しょぼ~ん。。。