週末は埼玉の実家に帰っていた。
別に特段の用があったわけではない。
月に一回ペースで帰るようにしているだけだ。
この春から母親が埼玉で独り暮らしを始めた。
父を亡くして20年近く、僕と姉が家を離れてからも10年以上、
母は岡山の広い家で独りで暮らしてきたのだが、
トシもトシなので、埼玉の姉夫婦の住む家近くに越してきたのだ。
しかし岡山の家はそのままだし、お墓も岡山にあるので、
厳密に言えば僕の実家はまだ岡山だ。
基本的に週末はヒマなので、月に一度は母の様子を見るため、
埼玉に行くようにしている。
僕の家からドア to ドアで一時間のドライブ。
近すぎず遠すぎず、この距離感がちょうどいい。
この用事がなければ車のハンドルを全く握らない恐れもある。
東京という街は便利すぎるのだ。
しかし一たび車を運転すると、ドライビングプレジャーというか、
「駆け抜ける喜び」(笑)というか、そういうのを再認識できて非常に楽しい。
愛車にももっと乗ってやらないといけないね。
なんだかんだで800万くらいお金をつぎ込んでいるのだ。
(僕のクルマと母のアルト(中古…))
800万って冷静に考えると常軌を逸してるよね。
昔と変わらずクルマは好きだが、給与減少局面&この不景気感のなかで、
今の僕にはそんな買い物怖くてできない。(^_^;)
ま、売る気もないし気に入ってる車なので、あと5年くらいは
乗り続けようと思ってる。
少々古くなっても恥ずかしくない点が外車の魅力だ。
実家に帰ると「する」ことがない。
僕の寝部屋として確保された部屋に篭り、
本を読んだり、PCに何かを打ち込んだりして、
あとはブラブラ散歩したり、母親とスーパーに買い物に行くぐらい。
非常に時間がゆったり流れ、とても快適だ。
どうせ独りで暮らしているんだし、
こんな生活なら東京の自分の家にいてもできそうなのだが、
実家のいい点は、東京と違ってかなり田舎なので、買い物に行こうかとか、
グルメをしようかとかいう、妙な迷いが起こらない。
それに人と一緒にいるので、自分のペースでしたいことをするのではなく、
ある種「必然」として家に縛られて、一定のリズムを持って寝起きすることになる。
これって自分にとってかなり新鮮で、安心して(あきらめて?)
じっくり家に篭ることができる。
結婚生活とか同棲生活ってこういうもんかなぁとも思うけど、また違うよね。
他人と同じ屋根の下で暮らすという感覚は一緒だけど、
相手との仲を円滑にするためにはコミュニケーションもアメニティも不可欠だ。
乗り気じゃないとか、疲れているとかいう「個別事情」は関係ない。
週末、一日中本を読んだり、布団から出なかったりしてたら、
二人の仲は早晩破綻するに違いない。
でも親は僕が相手しなくても、機嫌をとらなくても怒りださない。
ゴハンを一緒に食べて、お茶を一緒にすすって、
少々のたあいのない話をしている程度で十分満足のようだ。
僕っていい歳こいてバカ息子ですかね?
僕は洗練された親孝行だと思ってるんですけど(笑)。
茹でたてのとうもろこしとビールに舌鼓を打ちながら、
そんなことをうだうだ考えてみたりして。。。
さて時間だけはある週末。
買ったきりで全然観れていなかったDVDを観ることにした。
(ノートPCでね。)
今更ながら「ロスト・イン・トランスレーション」。
「ゴッドファーザー」でおなじみフランシス・コッポラの娘、ソフィア・コッポラの
監督第2作。
東京を舞台にしたこの映画で彼女はアカデミー・オリジナル脚本賞を受賞した。
住んでる街を外国映画というフィルターを通して見るというのは新鮮なのだが、
以前に「ブラックレイン」(松田優作の遺作で有名なアレ)での大阪の描かれ方には
大きく裏切られた。
映画としては松田優作の鬼気迫る演技がほとばしる秀作なんだけど、
この映画で描かれた大阪はまるで“マニラ”かどこかのような描かれた方で、
なんとなく気分が悪かった。
「どこやねん?この街!!」って感じ(笑)。
ま、考えてみたら日本でもとかく中央のメディアは大阪のことを
過度に面白おかしく描きすぎるよね。
大阪のオッチャン・オバチャンとか、
たこ焼き・お好み焼・串カツ「2度づけ禁止」とか、
グリコの看板とか阪神タイガースとか…(笑)。
大阪人自身もそんな扱いを楽しんでるきらいがあるので
別に目くじら立てる必要はないのだが、
あの街には寄せ集めシティ・東京にはないシャレ感も、
情緒も、文化も、美学も存在するのだ。
おっと、話がそれた。
「ロスト・イン・トランスレーション」に描かれるトーキョーは
非常にナチュラルだった。
新鮮さも感じられない代わりに違和感がなく、
その分ドラマに気持ちがすっと入っていけた。
これ意外なおどろき。
豊富に動員された日本人スタッフと、
監督ソフィア・コッポラの洗練された趣味のなせる技か?
映画はウィスキーのCM撮影のためたった独りで来日した
落ち目のハリウッドスター、ボブ(ビル・マーレイ)と
カメラマンの夫の仕事に同行してきたものの、仕事に追われる夫に放置され、
慣れぬ東京で孤独を味わうシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)の
淡々とした交流劇だ。
立場は違えど同じ寂しさを感じる二人が、トーキョーという「異文化」に放り出され、
ゆっくりと静かに心を通わせていく。
簡単にいうとそんな感じのお話。
旅先って恋に落ちやすいよね。
思いっきり異文化な場所だったらなおさらそうだ。
(「あいのり」じゃないけど(笑))
僕もインドやらトルコやらモンゴルやら、異文化圏で出逢った女性達には
短くほのかな恋心を抱いたものだ。
自分の「文化」とは全く違う場所にいることの高揚感と
その反面の孤独と不安がそうさせるのかな?
リゾート地での恋なんてものはひと夏越えたら忘れちゃうものだが、
異文化系の旅先での恋は概してプラトニックであり、
だからこそ宝物のような思い出としていつまでも心に残る。
この映画の恋もプラトニック。
でもそれだけに脆くて爽やかで、
なんともほろ苦い香りのする映画に仕上がっていた。
主人公の二人が拠点とし、語り合う舞台となるのが、
新宿の「パークハイアット東京」。
監督ソフィア・コッポラが以前にこのホテルに滞在中にインスピレーションを感じ、
この映画の構想を考えたという。
撮影にあたり、ゲストのプライバシーを優先するホテル側との交渉は
難航を極めたらしいが、コッポラ自身2度に渡り来日し
『この場所でなければ映画は完成しない!』と懇願。
ついにホテル側を口説きおとしたそうだ。
ソフィア・コッポラはパークハイアット東京を
『フローティング・オアシス(大都会の浮島)』と呼び、最大級の賛辞を表した。
確かに映画の中のパークハイアットは、超高層から大都会東京を一望し、
雑踏溢れる新宿の中にあって、不思議な静寂感を醸し出していた。
僕はまだ訪れたことはないんだけど、一度泊まってみたくなった。
でも、家から電車で10分の場所に何万も出して泊まるってのも、
考えてみたら荒唐無稽な話だよね…(^^;)。
それができるのが優雅なオトナというならば、僕はまだまだ子供だ。
「ロスト・イン・トランスレーション」。
東京在住の方にとくにオススメです。
新宿をよく歩く人にはもっとオススメです。
まだご覧になっていない方は是非。